日々のCBT習慣

視点を変えるCBT習慣:忙しい毎日のストレスを和らげる「リフレーミング」のやさしい始め方

Tags: CBT, リフレーミング, ストレス軽減, セルフケア, メンタルヘルス

忙しい日々の中で感じる心の重さ、それはきっと見方を変えるヒントになります

システムエンジニアとして多忙な日々を送る中で、心身の疲れを感じることは少なくないかもしれません。プロジェクトの締め切りに追われたり、予期せぬトラブルに対応したりする中で、ストレスや不安が募ることもあるでしょう。そうした状況で「もっと楽になりたい」と感じながらも、専門機関を訪れる時間を見つけることや、心理療法と聞くと敷居が高いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。

「日々のCBT習慣」では、そのような皆様のために、日常生活に取り入れやすい認知行動療法(CBT)の簡単なワークをご紹介しています。CBTは、私たちの「思考」「感情」「行動」がお互いに影響し合っているという考え方に基づいています。例えば、ある出来事に対して「どう考えるか(思考)」が変わると、「どう感じるか(感情)」や「どう行動するか(行動)」も変わっていく可能性があるのです。

今回ご紹介する「リフレーミング」は、この「思考」に焦点を当てることで、日々のストレスや不安を和らげる手助けとなるワークです。特別な準備は不要で、隙間時間に手軽に実践できます。

出来事の捉え方を変える「リフレーミング」とは

リフレーミングとは、私たちが何かを「フレーム(枠組み)」に当てはめて捉えている、という考え方から来ています。つまり、ある出来事や状況に対して、一度別の「フレーム」に当てはめ直すことで、その捉え方や意味付けを変え、結果として感情や気分を変えていくワークです。

ネガティブに感じていた状況を、別の視点から見つめ直すことで、新たな意味や可能性を見出すことができるようになります。これは、困難な状況をポジティブに転換させるだけでなく、心の柔軟性を高め、ストレスへの適応力を向上させることにも繋がります。

「リフレーミング」の具体的な実践手順

このワークは、わずか数分で実践できます。手軽に試せるので、ぜひ日常に取り入れてみてください。

推奨される所要時間: 3分〜5分程度

準備するもの: スマートフォンやメモ帳(頭の中で行うだけでも十分です)

実践手順:

  1. STEP 1:出来事と、その時のあなたの「最初の捉え方」や「感情」を明確にする

    • まず、ストレスや不安を感じた具体的な出来事を一つ選びます。
      • 例:「プレゼン資料が直前で大幅な修正指示を受けてしまった。」
    • その出来事に対して、あなたが最初に「どう捉えたか」「どんな感情を抱いたか」を言葉にしてみましょう。
      • 例:「また無駄な作業が増えた。上司は現場を理解していない。イライラする。」
      • 例:「これで間に合わなくなる。評価が下がるのではないか。不安だ。」
  2. STEP 2:別の「視点」を探す

    • STEP 1で明確にした出来事と捉え方に対して、意識的に別の見方や意味付けができないか考えてみます。
    • 以下の質問を参考に、様々な視点から出来事を見つめ直してみましょう。
      • 「この状況から何か学べることはないか?」
      • 「もし、この状況が将来の自分にとってプラスになるとしたら、それはどんな点か?」
      • 「この出来事を、全く関係のない第三者が見たらどう評価するだろうか?」
      • 「この出来事の、良い面や、隠れたメリットは何か?」
      • 「この修正指示は、将来的にどんなリスクを避けることに繋がるのだろうか?」
      • 「これを乗り越えることで、どんな力が身につくだろうか?」
    • 無理にポジティブにする必要はありません。ただ、別の角度から光を当ててみるイメージです。
      • 例:「上司が細部まで見てくれている証拠かもしれない。より良いものを作る機会だ。」
      • 例:「直前で分かってよかった。発表前に改善できるなら、むしろチャンスだ。」
      • 例:「今回修正点を把握できれば、次回以降の資料作成の質が上がるだろう。」
  3. STEP 3:別の視点から感じられる「感情の変化」に気づく

    • 新しい視点から出来事を捉え直した後、あなたの感情や気分に変化があったかを感じてみましょう。
    • 感情が劇的に変わらなくても、少しだけ肩の荷が下りたような感覚や、「そういう見方もできるな」という納得感が得られれば十分です。
      • 例:「少しだけ、イライラが和らいだ。確かに、今回直せてよかった。」
      • 例:「不安が全くなくなったわけではないが、次に活かそうという気持ちになれた。」

実践の際のポイント:

なぜ「リフレーミング」が効果的なのか:CBTからの簡単な解説

私たちが感じるストレスや不安の多くは、出来事そのものよりも、その出来事を「どのように捉えるか」という私たちの思考に強く影響されます。例えば、同じ「雨が降る」という出来事でも、「せっかくの休日に雨なんて最悪だ」と捉えれば気分は落ち込みますが、「たまには家でゆっくり過ごす良い機会だ」と捉えれば、気分は大きく変わるでしょう。

リフレーミングは、この思考のプロセスに意識的に介入するワークです。私たちは無意識のうちに、特定のフィルターを通して物事を捉えがちです。特に、ストレスが多い状況では、ネガティブな側面にばかり目が行き、「自動思考」と呼ばれるネガティブな考えが頭の中を巡りやすくなります。

リフレーミングは、この自動思考に気づき、「本当にそれだけの見方しかないのだろうか?」と問い直すことで、思考の幅を広げます。一つの側面だけでなく、多角的に物事を捉える練習をすることで、私たちは感情の囚われから自由になり、より建設的な行動を選びやすくなります。つまり、出来事に対する私たちの反応を、より柔軟で適応的なものに変えていく手助けとなるのです。

忙しい日々で実践するヒント:続けるための工夫

「リフレーミング」は、忙しい皆様の日常生活に無理なく組み込めるワークです。特別な時間や場所を必要としないため、ぜひ以下のヒントを参考に、日々の「CBT習慣」として取り入れてみてください。

完璧に毎日行う必要はありません。まずは「今日は一つ、試してみよう」という気持ちで、気軽に始めてみることが大切です。少しずつでも続けていくことで、物事の捉え方が変わり、心の状態が安定していくことに気づくはずです。

まとめ:あなたの心がより軽くなる一歩を

今回ご紹介した「リフレーミング」は、日々のストレスや不安に対して、私たちの心の柔軟性を高める非常に有効なCBTワークです。多忙なシステムエンジニアの皆様にとって、専門的な時間や場所を必要とせず、日常生活の隙間時間に手軽に実践できるという点は大きなメリットとなるでしょう。

出来事の「捉え方」を変えることで、感情の揺れを穏やかにし、心の負担を軽減できる可能性があります。今日から、目の前の出来事に対して「別の見方もできるかもしれない」という視点を持ってみませんか。

小さな一歩からで構いません。この「リフレーミング」を「日々のCBT習慣」として取り入れることで、あなたの心がより軽くなり、充実した毎日を送るための一助となることを願っています。